【レビュー】アリ・アスター監督最新作、映画「ボーはおそれている」

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こんにちは。

今回は「ヘレディタリー/継承」(2018年)や「ミッドサマー」(2019年)などのホラー映画で有名なアリ・アスター監督の最新作、映画「ボーはおそれている」の感想記事になります。

視聴後はなんとも言えない後味があり、うまく言葉にできなかったのですが、ようやく重い腰を上げてレビューを書いてみました。

ネタバレも含みますので、まだ観られてない方はご注意ください。

「ボーはおそれている」
アリ・アスター監督 (2023年 R-15)

あらすじ

不安症を抱える中年男性ボーは、離れて暮らす母親が怪死したという連絡を受け、埋葬のために実家に戻ろうとする。しかし、次々に起こる不可解な出来事が、ボーの帰省を阻む。彼を取り巻く不条理な世界は現実なのか、彼の妄想なのか、壮大なオデッセイホラーが幕開ける。

見どころ

  • 得体の知れない気味悪さ
  • 主人公の目線になって不思議な世界を体感
  • 散りばめられた伏線回収が面白い

前作「ミッド・サマー」と比べると、グロテスクな表現はマイルドな印象でした。
しかし、オデッセイホラーと謳っている本作の見どころは「得体の知れない気味悪さ」であると思います。

不条理な展開が次々とボーを襲います。話がスムーズに進まず、独特のリズムで話が進み、次の展開が予測できません。加えて、この映画では一貫して主人公ボーの視点で世界を見ているので、彼と同じ目線で予期しない妄想的な世界を体感していくことになります。

この狂気をはらんだ、約3時間の長尺映画ですが、至るところに伏線が散りばめられていて、視聴後も様々な考察を読んで楽しめます。公式サイトでは視聴後の人に向けた特別ページも設けているので、解説を読んだ後に映画を見返すと、更なる発見もあり、二度美味しい作品です。

感想(ネタバレ注意)

さて、ここからは個人的な感想を述べていきます。物語の核心にも触れますので、ネタバレが嫌な方はご注意ください。

見る人を選ぶ作品ですが、私は個人的に好きな作品です。
病的な不安を抱えて生きているボーの姿に共感できる一方、側から見たら彼の不安を回避するための行動が大袈裟で喜劇のようにも感じました。本人からしたら地獄のような苦しみなんでしょうけども‥。

一貫してボーの視点でから見た世界なので、不安にかられた人の心理や行動の解像度が高くて、胸が痛みました。

主演のホアキン・フェニックスの演技がすごかったです。ボーは中年男性なんですが、ずっと怯えた子どもの表情なんですよね。常に世界は恐ろしいと怯えながら生きている様子がひしひしと伝わりました。

作中で、違う人生を送ったifのボーが登場するのですが、それは立派な成人男性の振る舞いで、同じ人が演じているのか分からなくなるぐらいの使い分けでした。素晴らしかったです。

ストーリーの全容を把握しづらい印象の本作ですが、むしろその曖昧さ、意味不明さに狂気を感じて、夢を見ているような気分です。頭で考えるより、感覚で理解するタイプの作品かなと思います。

ボーの不安定な精神をモチーフが象徴的に使われていて、絵画鑑賞をしているような気分でした。

例えば、作中では「」が随所に盛り込まれています。
序盤のボーの誕生シーンは、母親の羊水の中から始まります。その後も、薬を飲むための水、浴槽に張られた水、など‥沢山の水が物語に絡んでおり、最終的にボーはボートから沈没し水の中に沈んで終わります。

これは母親の支配から逃れられなかったボーが、母親の羊水に沈んで胎内にかえっていったという暗喩ではないかと、解釈しました。

劇的な成長や変化があるわけではなく、ただ支配され続けるボー。

親に支配され、精神的に親の存在に縛られて苦しむ人にとっては色々刺さる映画だったと思います。近いトラウマ的なものを持っている方にはフラッシュバックを引き起こす可能性があるため、あまりオススメできません‥。

見る人によって評価がかなり変わる作品ですが、個人的には共感できる部分も多く、解釈の余地が沢山ありました。

見る人の解釈の余白が沢山ある作品がきっと好きなんだろうな、と思います。

今後も気になった映画がありましたら、書き留めようと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。ではまた!


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